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スチームトラップ取付配管に関する注意事項
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スチームトラップの一次側配管等
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この項では、蒸気主管に取付けられる復水排出管と、装置の復水排出管に関する注意点について述べています。
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蒸気主管
蒸気主管内では、蒸気の一部が放熱によって潜熱を奪われて復水になりますが、この復水を除去するために、一般に 30m~50m の間隔で幾つかの復水排出管(枝管)が設けられています。
後述する装置等の例とは異なり、高速蒸気に引かれて移動している復水をその中途で捕獲しなければならないため、完全除去は困難です。蒸気主管で発生する復水は、多くの場合少量であり、それに対応して復水排出管も口径の小さいものが使われます。このため、復水排出管を蒸気主管に接続するところには、捕獲効率を高める手段として図 4.1 に示すような復水集合ポケットを設ける方法があります。
図 4.1 復水集合ポケット
集合ポケットのサイズは、蒸気主管の径が 100mm までのときはそれと同じ口径 が、100mm 以上のときは少なくともその 1/2 以上の口径が望まれます。また、集合ポケットの底部はゴミ等を集塵させるため、復水取り出し口はその底部からやや上部に設けます。
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個別トラッピング
個別トラッピングとは、図 4.2 に示すように1つの装置の復水排出路に1つのスチームトラップを設けるトラッピングのことです。
図 4.2 個別トラッピング
これに対して、複数の装置の排出路を1つの共通復水管に接続し、その共通復水管に1つのスチームトラップを設けるトラッピングをグループトラッピングと言います(図 4.3)。
図 4.3 グループトラッピング
グループトラッピングは、不適切なトラッピングの典型例の1つとしてスチームトラップの講習等でもよく紹介されています。グループトラッピングが引き起こす問題を図 4.4 と図 4.5 を用いて説明します。
図 4.4 圧力が異なる装置
図 4.4 は、異なる圧力で使用される 2 つの装置の復水排出を1つのスチームトラップで賄おうとする誤った構成を示しています。装置 B は、装置 A より高圧であるため、発生した復水は難なくスチームトラップへ流れ込みます。一方、装置 A からの復水は、装置 B からの高い圧力によって装置 A 側の逆止弁が開かず、排出が妨げられます。
図 4.5 圧力が同じ装置
図 4.5 は、互いに同じ圧力で使用される装置の場合です。装置 B は通常運転状態で、その内部も所定温度に達しているものとします。この状態で装置 A の運転を開始すると、その中が冷えているために装置 B よりずっと多くの復水が発生します。蒸気が多く凝縮するために圧力が下がり、それによって装置 B から蒸気の流れ込みが生じます。装置 A はこの蒸気に抗して復水排出しなければならないことになります。
このように、グループトラッピングは、復水の円滑な排出を妨げ、装置性能に悪影響を及ぼします。スチームトラップの数量が少なくて済む構成ですが、明らかにスチームトラッピングに対する認識不足によるものです。個別トラッピングの妥当性を改めて理解することが大切です。
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スチームトラップの取付位置
スチームトラップを装置の復水排出路に取付ける場合は、できる限り装置に近いところに取付けるようにします。装置から遠くなるほど、その間でスチームロッキングが生じ易くなるからです。またその装置の復水発生部の最低位置、例えば熱交換器だと伝熱管の最低部かそれより低い位置に取付けなければなりません(図 4.6 参照)。
やむを得ない事情から、それより高い位置に取りつけなければならないときは、図 4.7 に示すように立上げ管を使用しますが、この場合次の点に注意します。
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● リフトフィッティングを設けてウォータシールを形成させる。
● 立上げ管の径はワンサイズ小さい(細い)ものを使用する。
図 4.6 スチームトラップの適切な取付け位置
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図 4.7 リフトフィッティングを設ける場合
ウォータシールする理由は次の通りです。
スチームトラップが復水排出を終えると蒸気が流入して閉弁しますが、このとき立上げ管は蒸気で満たされます。やがてまた復水が発生しますが、ウォータシールが形成されていれば、立上げ管内の蒸気が凝縮してその管内圧力が低下すると、直ぐに復水が管内へ入り込み、スチームトラップを通して速やかに排出されます。一方、ウォータシールがない場合は、立上げ管の蒸気が凝縮して圧力が低下すると、新たな蒸気が復水に先行して立上げ管に入り込みます。復水量が増し、管内の蒸気が凝縮するまで復水排出が待ち状態となります。
このように、スチームトラップの開弁時には必ずその管内で一時的なスチームロッキングを生じることになりますが、ウォータシールがあると、そのロッキング解除が短時間に行われます。さらに立上げ管の径を小さくできれば、その分いっそうロッキング解除時間が短縮されることになります。
図 4.8 シリンダードライヤ
スチームトラップを復水発生部より高い位置に取りつけなければならない装置として、次の例があります。両方共、復水発生部にサイフォン管の一端を浸し、トラニオンを通して復水をスチームトラップへ導きます。
図 4.9 回転式二重釜