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スチームトラップの機能と作動
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スチームトラップの分類
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スチームトラップは、弁の基本的な作動原理に基づいて、メカニカルトラップ、サーモスタティックトラップ、サーモダイナミックトラップに分類されています。さらに、各基本作動原理を具体化する方法によって、表 2.2 に示す幾つかの種類に分かれています。
表 2.2 スチームトラップの分類
分類 | 作動原理 | 主な種類 |
メカニカルトラップ | 蒸気と復水の比重差 | ・バケット式 ・フロート式 |
サーモスタティックトラップ | 蒸気と復水の温度差 | ・温調 ・バイメタル式 ・ダイヤフラム式 ・ワックス式 |
サーモダイナミックトラップ | 蒸気と復水の流速差等 熱力学・流体力学特性差 |
・ディスク式 ・インパルス式 ・オリフィス式 |
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メカニカルトラップ
蒸気と復水の比重差を利用し、フロートの浮力で弁を作動させるスチームトラップです。
密閉された球形フロートと、オープン型フロートであるバケットを用いる方法があり、前者をフロート式、後者をバケット式と呼んでいます。バケット式には上向きバケット式と下向きバケット式がありますが、今では下向きバケット式が殆どです。
次項で説明するように、フロート式トラップは、復水の流入によりフロートが浮上することで開弁する機構を有し、バケット式トラップは、復水の流入によりバケットが沈下することで開弁する機構を有しています。
フロート式トラップは、フロートの浮力を、レバーを介して弁に伝える機構を有するもの(レバーフロート型)と、レバーが無く、フロート自身が同時に弁の役割を果たすもの(レバーフリー型)とがあります。
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サーモスタティックトラップ
蒸気と復水の温度差を利用し、感温体の膨張、収縮力で弁を作動させるスチームトラップです。
感温体は、水とアルコールの混合液を封入した金属製カプセルやバイメタル、ワックス等で構成されます。復水は発生時点では飽和温度ですが、その後は放熱に伴い温度が低下します。復水温度が飽和温度に対してどの程度低下したときに開弁するかは、そのスチームトラップの設計時に定められますが、感温体の応答能力の限界から、飽和温度に極めて近い温度で作動させるのは困難です。
温調トラップは、予め作動温度を自由に設定でき、また変更できる点が他のサーモスタティックトラップと異なります。
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サーモダイナミックトラップ
蒸気と復水の流速の違いから生じる流体力学的特性や熱力学的特性を利用して弁を作動させるスチームトラップです。最も代表的なディスク式は、円盤形をした金属板(ディスク)の上側に変圧室と呼ぶ空間を設け、その反対側であるディスク下面で流体圧力を受圧する構造になっています。復水が排出される過程で、変圧室が復水の一部とフラッシュ蒸気で満たされ、それによって生じる圧力が、ディスク下面を蒸気が通過し始めた時の受圧力に打ち勝って閉弁し、変圧室の蒸気が凝縮してその圧力がディスク下面に働く受圧力より低くなると開弁します。
このディスク式トラップは、可動部がディスク1枚というシンプルな構造を持ち、小型で取付け方向の制限もなく、比較的安価なことから、スチームトラップの中で最も多く使用されています。
しかしながら、開閉弁のタイミングが、風雨や気温等の影響を受けて変わり易いこと、作動音が大きいことなどが弱点です。また閉弁間際に多少の蒸気ロスを伴うことが、省エネルギーの観点からマイナス評価されることもあります。
この他、微少の蒸気を常に漏らすことで内部に流れをつくり、復水の密度による衝撃力で弁を開弁させるインパルス式があります。
オリフィス式は、便宜上スチームトラップとみなされることもありますが、単に小孔とラビリンスと呼ばれる通路で構成されているものです。従って、スチームトラップ本来の‘蒸気をトラップする’機構を有さず、あくまでスチームトラップに準ずる機器に留まるものです。