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スチームトラップの機能と作動
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復水と空気の除去
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蒸気システム内は、蒸気が凝縮して生じた復水や、蒸気に溶け込んで運ばれる空気が存在します。これらの物質は、次に述べるような問題を生じるほか、装置等の酸化腐食の原因にもなるため、速やかにシステム外へ排出させなければなりません。
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熱伝導効率の低下
復水や空気は、熱交換器の伝熱面に薄膜を形成して熱伝導効率を低下させます。
表 2.1 物質の熱伝導率の例
物質
熱伝導率(W/m℃)
空気
0.025
復水
0.5
スチール
50
銅
400
表 2.1 は、空気、復水、スチール、及び銅のおよその熱伝導率を示すものです。この値が大きいほど熱の伝導性が良く、逆に小さいほど悪くなります。銅の熱伝導率はスチールの 8 倍もあり、熱交換器の伝熱プレートが銅製かスチール製かで熱伝導性は相当異なってきますが、空気や復水が関わると桁違いに悪くなります。
スチールに対しては、空気の熱伝導率はその 1/2,000、復水はその 1/100 しかありません。もし復水膜が 0.1mm 形成されたとすれば、スチールの厚さが 10.0mm
(0.1mm ×100)増えたことになり、空気膜が 0.1mm 形成されたとすれば、スチールの厚さが 200mm(0.1mm ×2,000)増えたことになります。
ここで伝熱プレートの厚さが 10.0mm だとすれば、復水膜によって熱伝導効率は 50%に低下し、空気膜では約 5%までに低下することになります。伝熱プレートが銅の場合は、その増加する厚さが、復水膜では 80mm、空気膜では 1,600mm と、途方もない値になります。空気や復水がいかに伝熱効率を低下させるか、おわかりいただけるでしょう。
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加熱温度の低下
空気の存在は伝熱効率を低下させることに加え、加熱温度も低下させます。このことは、ダルトンの法則によって簡単に理解できます。ダルトンの法則とは、‘2種類以上の気体が混在している気体の圧力は、各々の気体が単独でその体積を占めているとしたときの、それらの気体の圧力の和に等しい’というものです。
例えば、圧力 0.4MPa の蒸気中に 0.1MPa の空気が混入しているとすれば、蒸気自身の圧力は 0.3MPa になります。この場合、実際は 0.4MPa の飽和温度 144℃で加熱しているのではなく、0.3MPa の飽和温度 134℃かそれ以下の温度で加熱していることになります。しかしながら、圧力計はあくまで 0.4MPa を表示するため、装置使用者には分からないまま、製品の品質低下を招くことになります。
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ウォーターハンマ
復水がシステム内に残留すると、運転再開時などに‘ウォーターハンマ’と呼ばれる破壊的な現象を引き起こす可能性があります。ウォーターハンマとは、高速蒸気が滞留復水を引き連れながら流れ、やがてその復水量が増加して水塊となって配管の曲がり部やバルブ等の取付け備品に衝突する現象です。度々大きな衝撃音を伴い、場合によっては取付け備品等の損傷や破壊を招きます。