蒸気入門

  1. 蒸気の基本

     
    1. 水の相

  2.  

    殆どの物質は、固相、液相、気相と呼ばれる3種類の物理状態で存在し得ます。そして、それらの相にある物質を各々固体、液体、気体と呼んでいます。水の場合は、氷、水、蒸気といった言葉が、各々固体、液体、気体に対応しています。蒸気の特性を知るには、物質の分子構造についてその概要を理解し、それを氷、水、蒸気に当てはめて考えるのが分かり易いかもしれません。分子構造とは、分子が電気的に結合しているものと考えれば理解し易いでしょう。

     

    分子とは、その物質が持つ全ての化学的特性を有する最小単位です。水の分子は、

    2つの水素原子と1つの酸素原子で構成された化合物で、その化学式は H2O と表わします。地球に水が沢山存在する理由は、水素と酸素の何れもが、宇宙に最も豊富に存在する元素だからです。炭素もそのような元素の1つで、有機物を構成する主要元素でもあります。分子の動きの活発さは、その物質の物理状態(相)によって決まります。

     
    1. 氷(固相)

       

      氷の分子は、互いに接近して引き付け合って固く結合し、整然とした格子型構造になっています。各分子はその結合部付近の小さな範囲内で動いている(振動している)に過ぎません。これに熱を加え続けると、振動が強くなり、ついには一部の分子間の結合が破れて、固体から液体へと融け始めます(融解)。この融解するときの温度を融解点と呼んでいます。

       

      融解点は、大気圧下で 0℃であり、圧力が高くなれば融解点も高くなります。水の分子が格子状の結合を破って融解している間は、温度は氷の温度のままであり、従って加えられた熱は全て融解に費やされます。この熱量を融解熱と呼んでいます。固体から液体への相変化は可逆であり、同じ熱を周囲に放出して凝固します。この(融解熱と等しい)熱量を凝固熱と呼んでいます。

       

      殆どの物質は、固体から液体に変わるとその密度は小さくなります。即ち、固体のときに比べて分子間の距離が大きくなります。しかし、H2O の場合はその例外で、融解によって逆に密度が増加します。氷が水に浮くのはその為です。

    2. 水(液相)

       

      液相では、分子は自由に動き、たびたび衝突しています。しかし、互いに引き付け合う力が残っているために分子間の距離は依然として短いです。熱を加え続けると、動きや衝突がより活発になり、その物質の沸点まで温度が上昇していきます。

    3. 蒸気(気相)

 

水の温度が上昇するにつれて、分子の一部は十分な運動エネルギーを得て、瞬間的にその液体表面から上方の空間へ飛び出し、また液中へ落下するようになります。さらに加熱すると、その動きもいっそう活発になり、液中から離脱する分子の数も増加して液中の蒸気の泡が上昇し、液体表面を突破していきます。

 

 

蒸気の分子は、水とは比較にならないほど大きく離れ合っているため、その密度は、水の密度に比べて非常に小さくなっています。液面のすぐ上の部分は、この小さい密度の蒸気で満たされるようになります。

 

液面から離脱する分子の数が、液中へ戻ってくる分子の数より多くなると、水はどんどん蒸発していきます。ここに至って、沸点、或いは飽和温度に達したことになります。

 

圧力が一定のままなら、これ以上加熱しても、もはや温度は上昇せず、専ら飽和蒸気を生成するために費やされます。この熱量を蒸発熱又は気化熱と呼んでいます。その沸騰している水(飽和水)と飽和蒸気の温度は同じですが、単位質量当りの熱エネルギーは、蒸気の方がずっと大きいです。氷から水への相変化と同様に、蒸発の過程も可逆です。蒸気が温度の低い面などに接触すると、それが生成されたときと同じ熱量を外部に放出して凝縮します。この放出する熱量を(蒸発熱に等しい)液化熱と呼んでいます。

 

蒸気が凝縮することによって生じた水を復水(又はドレン)と呼んでいます。